Rakuten FinTech Conference 2017にみるFinTechの向かう先

今年で3回目となる Rakuten FinTech Conference。2017年9月27日にホテルニューオータニで開催されましたが、今年も錚々たる方々が登壇され、講演・ディスカッションをされる場となったようです。基調講演の竹中先生に始まり、海外のFinTech関連の企業の役員から一橋大学の野口先生やMITメディア所長の伊藤譲一さんまで、海外での動きが先行しているFinTechの最先端の動き、これからどこに向かっていくのか、FinTech革新が変える世界と日本を感じさせてくれたConferenceの様子をオンラインメディアの記事をピックアップして紹介します。なお、Conferenceの公式サイトに動画のアーカイブもありますので、さらに詳しい内容を見てみたい方はいまからみてみることもできます。

※下記サイトからの転載。ビッグデータ・AIなどに関するトピックを毎週取り上げています。
TechCrowd: https://www.techcrowd.jp/related/

 

竹中平蔵氏が一刀両断、FinTechが抱える本当の課題

ITProのRakuten FinTeh Conference 2017レポートです。慶応義塾大学名誉教授 東洋大学教授 元国務大臣竹中平蔵氏の基調講演「昨今の日本経済・アベノミクスの課題とFinTech革命」をレポートしているものです。

AI、IoT、ロボット、ビッグデータ、シェアリングエコノミーなどの新たなテクノロジーによって今、起きている変化を端的に示すと、既存の産業を支えてきた社会インフラがもはや必要なくなったといっています。タクシー産業やホテル・旅館業の国の制度とお墨付きが提供していた信頼をビッグデータをもとにしたITが提供できるようになりつつあり、FinTechの進展によって今まさに金融業界でも起きていると強調。

ただ、金融ではブロックチェーン技術を活用した取り引きなど安全性の立証も重要になります。そこで英国では「レギュラトリー・サンドボックス」を設置し、現行法の規制を一時的に停止するなどの規制緩和を実施。同時にサンドボックス内での実証実験も展開しているとのこと。日本でも政府の成長戦略の1つとしてレギュラトリーサンドボックスが導入されたが、大切なことはそれを今後、どのように利用するかであると民間主導での利用が進むことへの期待をみせていました。

最後に、「FinTechの進展で最も重要となるのは個人認証基盤の整備であると感じている。個人認証こそが、今後、FinTechに限らずテクノロジーが進展した社会で最も重要なインフラになってくる」と語り、マイナンバーカードの発行が遅れている日本の現状を憂え講演を終えたようです。

 

AIこそFinTech革命の「加速装置」、5年後の未来はこうなる

こちらもITProのRakuten FinTeh Conference 2017レポートです。「AIがもたらすFinTechの革新」と題したパネルディスカッションの中で、産・学双方の立場からAIがもたらすインパクトについてさまざまな意見が交わされた様子をレポートしています。

世界最大級の資産運用会社の日本法人であるブラックロック・ジャパンの入山氏は資産運用におけるAIの活用の実態を説明してくれていますが、最近は、証券会社のアナリストのレポートを「4000レポート、3万6000ページ、53言語」にわたってAIに読み込ませて学習させ、市場の“感情”を読めるようにまで進化させているとのこと。

IBMでWatsonの研究を手がけられているトビー・カッペッロ氏はAIがFinTech分野を始めとする産業分野に今後五年間で起こる使われ方の大きな変化として「二つある」と述べています。まずはAIが解析する対象がより広範囲になるとのことで「データには非構造化データと構造化データがあるが、AIの未来はテキストの中にある」、つまり、論文や報告書などのテキストデータ、写真やイラストなどの画像も含めて膨大なデータを解析することで知見を抽出するようになるといいます。

そしてもう一つが、AIの「推論」機能のさらなる活用とのこと。「Watsonでは、すでにある映画を見せると、その予告編の映像を作ることができるようになった。つまり、人間がどこに興味を持ちどこに面白さを感じるのかを理解し、推測できるようになるまで進化した」と説明しています。

 

量子コンピュータはブロックチェーンの脅威になる

ブロックチェーンの進化とDigital通貨」と題したパネルディスカッションについての ITProのRakuten FinTeh Conference 2017レポートです。

パネルディスカッションの最初のテーマの中で、一橋大学の野口先生が、「電子マネーと銀行発行の仮想通貨には管理主体がいるが、ビットコインにはいなかった」「ビットコインを運営しているのはP2P(ピア・ツー・ピア)でつながったコンピュータの集まり。集まりに過ぎないのに、信頼が求められる事業を実行していることはコンピュータサイエンスにおける非常に大きなブレイクスルーだ」と強調しています。

野口先生は、また続いてのテーマのICOの中では、「スタートアップ企業が株式ではない新たな資金調達の方法を手に入れた。『資金調達の方法を民主化した』という意味で重要なイノベーションだ」と強調しつつも、事業が実際に行われる前に、ホワイトペーパー(計画書)を出した段階で資金を調達できてしまうところが、IPOよりもリスクが高くなっている要因の一つとして、今後、検討を進めていく必要があると述べています。

最後のテーマはブロックチェーン。野口先生は、現在のコンピュータをはるかにしのぐコンピューティング能力をもつ量子コンピータが発展するとブロックチェーンを支えている暗号化技術が破られてしまう可能性があると述べつつも、新しい暗号化技術も開発されつつありそのような暗号化技術では量子コンピュータでも簡単に解くことはできないと考えられていると説明し、今後も新しいブロックチェーンが開発され発展していくだろうと見解を述べています。

 

日米中のキーパーソンが集結、決済の新星たちが注目する技術

「The Future of Payments」と題したパネルディスカッションについての ITProのRakuten FinTeh Conference 2017レポートです。

中国で「WeChat Pay」を運営するTencentのリン・タン バイスジェネラルマネージャー、「Zelle」を運営する米Early Warning Servicesのエリック・ウッドワード リスクソリューション担当グループ プレジデント、Kyashの鷹取真一 代表取締役が登壇。テクノロジーの進化が決済をどう変えていくのかについて議論を交わしたが決済サービスの進展において、重要となる技術への答えは、3社ともに「個人認証技術」とのこと。
タッチポイントでの個人認証技術、顔認証技術などが決済の進展においても重要となるようです。